片道24時間をかけて、九州から被災地へ向かった100人の人たち。〜日本で一番Facebookを活用している町の「つなぐ力」


「政治家なんて信じられない。」
「行政って動きが遅いよね。」
「西日本の人にとっては、東日本大震災は遠い存在。」


こんな話が出ると、僕は「ちょっと待ってよ」と言う。そして、「いや、そうじゃない、素敵な町があるんだ」と。そう言って、紹介するのが、佐賀県武雄市。そして、樋渡市長の存在。ちょうど今日11月18日は市長の誕生日だし、改めて武雄市のことを書きたいと思う。


とにかくスピードが早い。twitterfacebookは他の自治体に先駆けて導入。導入どころか、いまや、facebook活用事例の1つとして挙げられる存在で、なんと3ヶ月で閲覧数1000万件。旧来型サイトの時は月5万件だったらしいから、驚くべき数字だ。



最近は、facebookを活用した特産品の物販もスタート。iPadを活用した授業や図書館についての取り組みを既に始めているし(お役所によくある「検討」ではない)、何度か紹介しているけど、もはや、そこらのベンチャー企業より遥かにスピード感がある。


市長本人もよく言っているけれど、これは市長の力だけでなく、職員のみなさんの活躍があってこそ。僕は何人も職員のみなさんにお会いしているけれど、良い意味で僕の「役人像」を覆す人たちだった。とにかくフットワークが軽くて、頭が柔らかくて、温かくて。


そんな武雄市だから、被災地支援の動きも早かった。


武雄市タウンステイ構想(東日本大震災被災者の受け入れ)を3月16日には発表し、いち早く被災者の受け入れを表明。しかも、フェーズにあわせて、既にこの構想を4回も改訂しているのだ。


中でも、僕が特に注目したのは、タウン・サポート「チーム武雄」。先月、ひとまず、当初の日程を終了しているけれど、あえてこのプロジェクトをとりあげたい。ただのボランティアツアーでしょ?と思うかもしれない。違う。このチーム武雄は「たいせつなもの」を僕に思い出させてくれたのだ。このプロジェクトでは、東日本大震災の被災地復興を支援するため、往復の移動費(バス)とボランティア保険加入代を市が負担し(その他は各自参加者が負担)、町をあげて、ボランティアへ行く人を増やそうという動きだった。(→出発式の様子はこちら


計5日程。延べ100人。少ない?一見すると、よくある自治体のツアーだと思えなくもない。でも、考えてみて欲しい。東北と九州。武雄市佐賀県。活動先の陸前高田市まで、およそ1600km。バスで片道24時間ですよ。東北は東京から遠い?関西から東北は遠い?チーム武雄はそんなことを忘れさせてくれた。地理的な距離は遠いかもしれない。でも心理的な距離はとっても近い。いち早く、被災地入りした市長や、市の職員、市議のみなさんなどの存在や、丁寧に行われた報告会で、被災地とつながる意味が「伝わった」のだと思う。


「遠くで起きたこと」になっていないことに、僕はハッとさせられた。インターネットやソーシャルメディアのおかげで、地球上の裏側の人とも簡単につながれる時代。ぼくらは“ただ”つながることに満足していないだろうかと。たいせつなことは、そこに、血流を増やすこと。つながるだけでなく、つながって何を為すかはとっても大事だと思う。


チーム武雄の様子は、武雄市facebookページや樋渡市長のブログなどで紹介されているけど、さらに素敵だなあと思ったのは、行った100人だけでなく、その100人に、行けない武雄市の人たちの思いも乗っていること。見送りや出迎え、そして、報告会の様子が「チーム武雄」であることを感じさせてくれる。きっと、武雄市にとって誇りの存在。そのことが、益々、熱い気持ちにさせられる。年齢も職業も違うツアー仲間(市民)が、親しくなって、ツアー後も交流が続いているという。思いが循環してるのだ。



みんなで見送り・・・


みんなで出迎える。


僕自身もこの夏、学生たちと被災地を訪れ、4日間を共にした。その時のメンバーは、いまでもたいせつな「仲間」。このメンバーだったら何でもできるんじゃないか、そう思えるメンバーだった。だから、武雄市もきっと同じなんじゃないかと思う。武雄市がこれからまた新たなまちづくりを進めていくうえで、彼らは1つの大きなエネルギーになるに違いない。


武雄市は、日本有数のソーシャルメディアを使いこなしている町であることは間違いない。でも、それを支えているのは、きっと、こういう「心動かされる何か」を持っているからなんだと思う。市のFacebookページ(公式サイト)を通じてもその様子は伝えられ、市民はもちろん、多くの人たちがこのプロジェクトの様子を見、そして、応援した。遠くの人とつながる力。思いをつなげる力。さすが、つながる部という部署がある町。つなぐ力がある。


そして、樋渡市長は言っている。チーム武雄を、チーム日本にしたいと。


樋渡市長のブログ(武雄市長物語より):

ぜひ、お住まいの市役所や町役場を突き上げてください。ボランティアバスを出してほしいと。僕は僕で、いろんな場面を通じて、非被災地の首長や議長にはお願いにまわります。

武雄市では、これを単発に終わらせず、来年も再来年もしつこく、「もう来なくていい!」と言われるまで、陸前高田市気仙沼市、そして、仙台市の被災地支援を行って参ります。

市民主導のボランティア「チーム武雄」が、国民主導の「チーム日本」になって、被災地(者)をサポートする。それが、今の被災地、そして、日本に最も求められていると思います。国会議員も政府も、私から見て全然動かない状況の中で、自治体、そして、自治体の構成員である市民の皆さんが水平的に動く。僕はここに光明を見いだしたい。一つの灯が燎原の火のようになることを重ねて祈ります。


「変わる」と信じられる自治体の存在は、僕にとって大きな勇気。そもそも、僕が8月に東北へ行くことを決意したのも、樋渡市長の講演がきっかけの一つだった。「とにかく一度行ってみて欲しい。」と。だから、僕も「チーム日本」の一翼を担いたいと思う。「なんにも変わらないね」と言うだけで終わるのでなく、「何かできることがないか」と考えたい。


被災地を訪れること。それは、小さな力かもしれないけど、確実に被災地の力になる。そして、それはなにより、明日の日本の大きな力になる。


今年中になんとかもう一度被災地に行く機会をと思って、12月末三連休に日程を組んだ。ずばり、クリスマスの時だけど、学生は冬休み。社会人(土日休みの人)は、会社を休まなくて参加できる日程だ。心のどこかでひっかかるものがある人、学生でも社会人でもぜひ一緒に。


クリエイティブの可能性・東北冬合宿(2011.12.22-25)


つながる意味、つながる価値。ぼくはそれをもう1度じっくり考えてみたいと思う。


※写真は、樋渡市長のブログ「武雄市長物語」および武雄市Facebookページからお借りしました。