自治体が自分たちの生活の中に入ってくる。〜あれから一ヶ月。やっぱり武雄市ホームページのFacebook化は意義深い。


ちょうど1ヶ月前の8月1日、とっても画期的なニュースがあった。


「佐賀県武雄市、市のページをFacebookに完全移行へ」


その発想力と行動力で、僕がこの1年ずっと注目している武雄市。2月に市役所ホームページのコンテンツをFacebookページに流し込んだのも早かったけど、それから半年で、早々に「Facebook完全移行」を実現させた。Facebookを中心にこのニュースは話題になったけれど、1ヶ月経った今、これはただのソーシャルメディア関連のニュースではない、行政やまちづくりのあり方が変わるニュースだったなあと改めて思う。


このニュースを受けて、ネット上には賛否両論、色んな意見が飛び交った。公共サービスを一私企業の無料サービスに置くことの是非。アクセシビリティに欠けるのではという議論。確かに技術的な課題はたくさんあるかもしれない。でも、根強い抵抗感は、まさに今回の取組みが「新しい」証拠だったんだと思う。


樋渡市長は記者会見の中で、市のホームページをFacebook化するメリットは3つあると言った。


・関われること(双方向性)
・スピーディーなこと(即時性)
・透明性があること(透明性、情報公開性)


確かに、Facebookに馴染みのない人はどうするだとか、年配のネットに馴染みがない人には不便でないのかとか、色んな議論があると思う。でも、実はこの3つ、多くの国民(市民)が政治や行政にずっと求め続けてきたポイント3つなんじゃないかと思う。


・もっと市民の声を聞いてくれる行政(市民目線の行政)であったら…
・もっと民間並みにスピード感がある行政だったら…・もっとオープンな行政であったら…


まだ日本に浸透しはじめて間もないFacebookだから、つい抵抗感が沸いてしまう人がいるのも仕方ないけれど、もしそれが、みんなが行政に求め、今まで実現できていなかったことを実現できる施策なのだとしたら、別にFacebookであろうがなかろうが、やらない理由はないと思う。むしろやるべきなんだ。やらない理由は小さいこと。やる理由の方が意義深い。


そして、施行から1ヶ月。僕も傍から、武雄市役所のFacebookページの様子を眺めていたのだけれど、「やっぱり、この取組みはいいな」と思った理由がもう1つある。


それは、市のホームページのFacebook化によって、


自治体が自分たちの生活の中に入ってくる」


ことが実現されたからだ。今まで少し縁遠かった自治体(行政)が限りなく僕らの近くにやってきたと言ってもいいすぎじゃないと思う。


とりわけ、僕がセンスがいいなあと思ったのは、土足で僕らのウォールに入ってこないこと。


↓毎朝、こんなメッセージから武雄市役所の投稿は始まります。

↓職員採用のための動画。動画もうまく使いこなします。

↓議会の定例会見の模様の報告。補正予算案の概要もアップされています。

↓メディアへの掲載記事。こんな時代だから、すぐ掲載(報告)することに意味があります。

↓特産品課係長のレポート記事。市の職員の方がとっても身近に感じられます。

↓市民のコメントに補足説明できるメリットは大きいです。


人によっては、自分が住んでいる自治体のホームページをブックマークしたり、あるいはRSSで登録している人もいるかもしれない。でも、そういう人、本当にごく少数じゃないかと思う。僕個人(地元は東京都豊島区)で言えば、新聞も定期購読していない今、区民だより(市の広報誌)は自宅には届かない。駅やコンビニで手に入れることはできるけれど、気がついた時にしか手に取らないし、区のホームページを見る機会なんて、何か手続きが必要な時に検索する時くらいだから、区の情報に接する機会はほとんどない。


それがFacebookに毎日必ずログインするようになった今、毎日必ず、武雄市の情報に触れるようになった。(地元でも故郷でもないのに。)そして、しばしば、いいね!をクリックし、たまにコメントしたり、シェアしたりする。


武雄市も、「色んな施策に対する市民の声が聞ける」「イベントの告知に有効だ」などとその効果について言っているけれど、引っくるめて言えば、その本質は、自治体との接点が増える」ということじゃないかと思う。上のキャプチャをみても、それは明らかで、「自分の自治体にコミットする敷居が下がった」ことや、自治体のスピードが、一般の生活スピードに追いついてきた」ことを意味すると思う。今まではこれだけスピード感ある情報社会になっているのに、行政のコミュニケーションのタイミングや頻度は、ものすごくスローなものだった。


これって、実は革命的な変化なんじゃないかと思う。もし、地元で同じようにFacebookページがあれば、地元に興味が沸く機会はきっと増えるに違いない。何かイベントに参加しようという機会も増えると思う。そして、分からないことがあればその場で聞けるし、いいね!をしたり、シェアをしたりすることで、市民自身が広報に一役買うこともできるわけだ。


でも、この議論をしていると、きっと次の指摘をする人が現れると思う。


「住民全体からみたらまだまだ、Facebookユーザーは一部。
 対象が一部の人に偏っているのでは?」


でも、あえて、僕は言いたい。それでもトライする価値があるんじゃないかと。確かに、公共という存在は、弱者や全体を意識したものであるべきかもしれない。Facebookを現在使っている人というのは、そういう意味では、イノベーター理論でいう、マジョリティではなく、アーリーアダプターだ。でも、自治体がより早く、よりアクティブな施策を期待するのであれば、もっと将来を見据えたアクションをとることも時に必要なんじゃないかと思う。


Facebookだけが続くとは思わない。でも、ソーシャルメディアが生活の中にもっと入ってくるのは、きっと間違いないだろう。今回、半年でこのアクションができた武雄市は、次に新しいツールの導入が期待された時も、いち早く動けるに違いない。


Facebookに限らず、これからも色んなツールが出てくると思う。そしてそれを導入しようとする度に、きっと言われるんだと思う。「早すぎるんじゃない?」「まだいらないよ」って。インターネットも携帯電話も、古くはパソコンやウォークマン、テレビ、電球だって、そういう過程を経てきたんだと思う。Facebookがずっと主流がどうかは分からない。でも、新しいツールを使いこなし、それを利用している人の中に入っていく姿勢は、行政のみならず企業にも個人にも今後益々問われていくと思う。


アメリカの人気マーケター、セス・ゴーディンは新著『新しい働き方ができる人の時代』で、人間には爬虫類脳というのが強く働いており、これのせいで新しいことを起こすことへの恐怖感が必ずつきまといがち。だからこそ、それに立ち向かい、乗り越えていく人(アーティスト)が今求められていて、そんな人たちがこれからの時代をリードするんだ、というようなことを書いている。きっと、武雄市は、それを行政として実行しているまちなんだと思う。


facebookだって、google+だって、それをどう使うか、それがどう世の中を変えるかが勝負。


武雄市役所Facebookページ化の価値。それは、ただ、Facebookを導入したところにあるんじゃない。Facebookをつかって、市民と行政の関係性を発展させたところあるのだと思う。佐賀県武雄市に注目だ。企業以上に素早いその行動に、今後も注目です。


※写真は武雄市つながる部秘書広報課フェイスブック係のみなさん


p.s.


来週末、9月11日(日)、12日(月)に、日本ツイッター学会/フェイスブック学会総会が武雄市で開催。


昨年8月のツイッタ―学会・設立イベント、今年2月のフェイスブック学会・設立イベントに参加したけれど(その時のレポート「企業より動きが早い自治体、武雄市。2/7、日本初!?の自治体ホームページのFacebook化、日本フェイスブック学会発足。」はこちら
人口5万人の街に、全国から人が集まっている様子はとっても感慨深いし、何かが「変わる」瞬間というのは現場でしか味わえません。


関東から交通費かけて行く価値あり。ご都合つく方はぜひ。行こう、武雄へ。


◎9月11日(日)日本ツイッター学会/フェイスブック学会総会(1日目)
https://www.facebook.com/event.php?eid=250778744942248

◎9月12日(月)日本ツイッター学会/フェイスブック学会総会(2日目)
https://www.facebook.com/event.php?eid=119828304781345