1年かけてようやくできたチャリティのカタチ。Twitterから生まれたハイチチャリティPJT【JP2HAITI】に注目。


今月、素敵な一曲が産声をあげた。

JP2HAITIHIPHOP界を牽引するZEEBRATwitterでつぶやいたことがきっかけに生まれたハイチ救援のためのプロジェクト。地震から1年。1年の準備期間を経て、ようやくこの2月2日に、総勢30名のミュージシャンが参加したチャリティソング「光 -Hikari-」がリリースされた。正直、僕は、つい最近までこのニュースを知らなかった。それもそのはず。楽曲の売上をできるだけ多く募金としたいというその一心のため、プロモーション費用はゼロ。だからこそ、プロデュースは、アーティストの選定からブッキング、楽曲編成に至るまで全てをDJ YUTAKAZEEBRAがトータルプロデュースして、極力企業が絡まない形を模索したらしい。本当の意味での「チャリティ」を目指して。よくある番組やスポンサーとのタイアップもしていない。リリースするまでにかかった「1年」に意味がある。


1年前、TwitterZEEBRAがこのプロジェクトを呼びかけた、その時、いとうせいこう原口一博(元総務大臣)、サイバーエージェント藤田晋社長らたくさんの協力者の声以上にと同時に集まったのが、「フルボッコ」と言えるくらいの非難の声だったらしい。そんな声にZEEBRAはこう反応したらしい。

「チャリティーを支援するからといって、別に聖人君子を気取るつもりはありません。私財を投げろとのご要望がありますが、出来る事をするだけです。希望が持てるチャリティーにするべく邁進いたしますので、末永く見守って頂けたらと思います」

残念ながら、誰かが何かをすると、決まって、その出る杭を打つ人がいる。それが世の常と言えば、そうなのかもしれないけれど、僕らがすることは、誰かの行動を非難することじゃない。DJ YUTAKAZEEBRAが中心になって主導したこのプロジェクトは、いろいろあったけれど、そんな非難する“彼ら”ではなく、応援する“仲間たち”によって支えられた。

仲間のミュジーシャンたちが、所属事務所やレーベルの垣根を越えて賛同した。
コンセプトに共感する人たちが、プロジェクトメンバーの背中を押し、その想いを人々に広める手伝いをした。

知れば知るほど、素敵なプロジェクトなので、僕なりに今日は紹介したいと思う。


ハイチの震災から1年。「もっと早くできなかったの?」という声が聞こえてきそうだ。多分、もっと手軽にやる選択肢があったに違いない。でも、あえて、彼らは、それを選ばず、自分たちのスタイルにこだわったんだと思う。僕はそこに共感。早いのもいいけど、生まれるのに適切な時間ってあると思う。

1円でも多く、ハイチに寄付金を多くまわせるためには、どうしたらよいか?
自分たちが参加したくなるチャリティの形ってどんなものだろう?

彼らは、既存の形にはこだわらなかった。今までのチャリティの形ではなく、新しいチャリティの形を模索した。
今回のJP2HAITIを企画した彼ら自身も、1年前は「チャリティってなに?」って思う立場だったらしい。でも、だからこそ、そんな彼らの行動、メッセージに価値があるんだと思う。チャリティに馴染みのない人たちからしてみれば、彼らは「こっち」の人。実際、UST番組やTwitterから伝わってくる、彼らの言葉には心を打たれる。そして、誰かに頼らず、自分たちで、それこそ手に塩かけてやってきたプロジェクトだから、人々の共感を呼ぶ。決して「やらされた」プロジェクトではない。

そんな彼らが、先月1月12日に、UST番組をやって、プロジェクトの詳細はもちろん、プロジェクトに込めた想いや、ここに至るまでの葛藤などを伝えてくれている。何気にこの番組が、とっても本質的な話をしているから、チャリティや社会貢献に関心がある人や、ソーシャルに関心がある人はぜひ観て欲しい。1月12日はまさに、ハイチ地震から丸1年という日。(途中、モデルのマリエちゃんやいとうせいこうさんも登場、リリースされた曲も流れます)

JP2HAITI UST番組(2011/1/12放映)

UST番組の中でも言っているけど、「(強面の)(学校嫌いだった)(チャリティなんてやらなかった)俺らがやることに意味がある。」そう、これを誰かに担がれてやったのであれば、ここまで僕は共感しなかったと思うし、TVで同じようなチャリティ企画があっても、ここまでは共感しなかったと思う。「お前らが本当にやるの?」と言われるような彼らが非難の声も浴びながら、1年かけてここまでやってきた。彼らが自分の「声」「気持ち」「本音」でやっているから僕は共感してるんだと思う。

企画した彼ら自身にとっても、ハイチ支援は当然の目的だけど、それだけでない「意味」をこのプロジェクトに感じていたらしい。「今回の動きは、業界の中でも、枠を越える、画期的な新しい動き。」そして、「いつも作っている自分たちの曲ももちろん売れて欲しいと思っているけど、今回は、売れれば売れるほど、ハイチの人たちの力になる。だから、心から、買って!って言えるんだ。」って。いろんなところでいい古されているけど、もう、そこに想いや意味、ストーリーを感じないことには、人は動かない。でも、確実に、このJP2HAITIには、そんな要素があるんだ。


何がすごいのか。何が共感を呼ぶのか。
今流のプロジェクトのヒントが、このプロジェクトにはあると思う。


1つ目は、コラボレーション

まず、30組のミュージシャンが、所属事務所・レーベルを越えて参加しているというのがすごい。作詞はいとうせいこう。でもラップ部分はそれぞれのアーティストがリレー式で作ったらしい。HIPHOP中心に、レゲエ、ロック、J-POPとジャンルも様々。重鎮から若手まで年代も様々のコラボレーション。しかも、著作権料は、JP2HAITIプロジェクトに帰属して、著作権料は全て寄付にまわされる仕組みになっているらしい。とにかく、みんなで作っていこうよという気持ちに溢れているプロジェクトで、ZEEBRAたちは、「どんどんこの曲、このプロジェクトをみんなに広めて欲しい」と言ってる他、現在、この曲を海外に広めるための翻訳ボランティアも募集中だったり、今後は、実現させたいチャリティライブではボランティアスタッフを募集予定とのこと。

JP2HAITI 「光-hikari-」 参加アーティスト: ( 楽曲歌唱順 )
AI / MOOMIN / DJ KAORI / JAMOSA / かまやつ ひろし / 青山テルマ / KEN-U / 横山 剣 / Full of Harmony / May J. / SATOMI / DOUBLE / 難波 章浩 / 清水 翔太 / Miss Monday / 大黒 摩季 / Rino Latino / 日高 光啓(AAA)/ DELI / TARO SOUL / GAKU MC / SIMON / 高木 完 / LUNA / RANKIN TAXI / RYO the SKYWALKER / K -Dub Shine / RHYMESTER / PUSHIM / TERU (GLAY)


2つ目が、システム

売上の60%が寄付にまわるというのが、とにかくすごい。「(大物ミュージシャンも参加してるし)どこか特定の企業などから声がかかったりしなかったの?」という声があったんだけど、あえて、彼らはそれをしなかったらしい。なぜか。関わる人が増えれば、経費も増え、結果、寄付にまわるお金が減ってしまうから。あえて、CDでなく配信を選んだのもその理由。itunesで200円でダウンロードすると、114円が寄付にまわる。買ったら半額以上が寄付。これってすごいこと。金額だけでみたら、1万円のものを買って1%を寄付にまわすのと同等の金額かもしれないけれど、これは次元が違う話。仕組みや流れ自体を変えなくてはできないこと。そこには、もちろん、協力者・賛同者あってこそ。それをやってのけたから、このプロジェクトは意義深い。


3つ目が、オープン

そして、もう1つこのプロジェクトがすごいのは、そのあらゆる過程、これまであまりオープンにされてこなかたような音楽配信の流れ、寄付に至る流れなどをを全てオープンにしていること。寄付金額のトータル金額や、寄付率のパーセンテージだけが公表されるのが普通。だから、不透明になって、ともすると胡散臭さを伴ってしまうんだけど(もちろん、そうじゃない団体もたくさんあります)、その内訳まではなかなかオープンにならない。でも、このプロジェクト、売上から寄付にまわるまでにどこでお金が経費としてかかるか、これ以上は難しいというその理由まで、全てオープンになっている。(公式サイト:「配信に関しての費用/内訳」)不透明さが、誰もが持っている「力になりたい」「チャリティに協力したい」という気持ちを阻害している一つの要因だと思うんだけれど、この企画はそこが完全にクリアなわけです。TwitterUstreamをつかって、直接メッセージを伝えて来たというのも、今流。だから僕らは共感する。


そして、4つ目。何より共感するのが、個の存在とその想い

繰り返し言ったように、このプロジェクトが、1個人から生まれ、個人同士がつながって生まれているというのが、とっても今の時代、ソーシャルの時代らしいなあと思うんです。これまでも同様の組織横断のプロジェクトってなかったわけではないけど、やっぱり、本当の意味で、一組織、一企業の枠を越えてコラボレーションする、プロジェクトってまだまだ少ないですよねえ。UST番組観ていても、ステージで見るアーティストとは違う、何かに制約されていない、人間っぽさを感じるわけです。いいところだけとか、わかりやすいところだけとかじゃないから。台本もなく、彼らが今、思うことを語ってるから。


色々言ったたけど、本当にいいプロジェクト。だから、ぜひ、ホームページ観て欲しいし、USTも観て欲しい。そして、何より、楽曲ダウンロードして欲しい。コピーして貸しあっても、意味ないから。そして、一番お願いしたいのは、誰かにこの素敵なプロジェクトを広めること。残念ながら、検索しても、このプロジェクト、ニュースなどであまり取り上げられていないことがわかります。(ちなみに僕は妻から、教えてもらいました。)八百長問題よりこっち取り上げて欲しいなあなんて思ったりも正直してしまうんですけど、いいんです。ここから、みんなで広めていけたら。たぶん、もうそういう時代。


きっと、これから、こういうスタイルのプロジェクトが増えます。
みんなで真似しましょう。これ、絶対に、世の中良くする動きだから…。


つなぐ専門家として、僕は世の中に増やしていきたいと思うのは、まさにこういうプロジェクトだったりもしています。



<参考サイト>

Yahoo!ニュース(bmr.jp)〜JP2HAITIチャリティ・ソング「光-hikari-」 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110112-00000004-notr-musi

◎2011.2.2 new release!『光-hikari』ダウンロード
[itunes] http://itunes.apple.com/jp/album/id415587445
[その他(レコチョク他)] http://ameblo.jp/jp2haiti-music/entry-10785181538.html

◎JP2HAITI 公式ホームページ http://jp2haiti.com/

◎JP2HAITI 公式Twitter http://twitter.com/#!/jp2haiti

◎Hope For Haiti from Tokyo http://hopehaiti.jimdo.com/
※去年2月にやったハイチチャリティイベントです。想いはZEEBRAさんたちと一緒でした。